IPTPC からの情報発信
IPTPCは、2003年よりVoIP認定技術者資格制度の運営を行っており、累計資格者数は2011年7月の時点で18,000名を超えています。
これまで統一的な水準の技術者を養成するための研修や資格制度、また、ビジネスコミュニケーション東京等の展示会やIPTPC主催のIPTPCセミナ等を通じて、IP電話普及推進のための活動を行ってまいりました。今後は、IPTPCのホームページより、ホワイトペーパーやWebコラムなどを定期的に掲載することにより、今まで以上に情報発信を行ってまいります。
タイトル:
IPTPC連載コラム 「IP電話サービスの課題と将来展望」
第5回 IP電話の新たな可能性
2010年10月28日
IP電話普及推進センタ(IPTPC)
OKI代表 千村 保文
これまでにIP電話の課題と解決に向けた政府の取り組み、相互接続の状況を紹介し、IP電話の活用スタイルについて考察した。
今回は、IP電話の新たな可能性について、個人的な見解を紹介する。
1.IP電話の特徴
IP電話は、インターネットやNGN(次世代ネットワーク)などのIP網を活用した音声サービスである。しかし、IP電話は、単に「IPを用いた電話サービス」という以外に以下のような特徴を有する。
(1)ソフトウェア化
- IPは、元々PCなどデータ通信を目的に開発された歴史がある。従い、IP電話は、PCなどのコンピュータ上にて「電話機能をソフトウェア化できる」という特徴を持つ。既に、汎用PCにインストールして使う「ソフトフォン」は各社から製品化されている。
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(2)非番号ID
- 通信事業者によるIP電話サービスや企業のIP-PBXの端末では、従来の電話と同様に電話番号がIDとして使われている。しかし、インターネット電話のアプリケーションでは、電話番号ではないID(例えば、メールアドレスと同じようなテキストベースのSIPアドレスなど)が使われている例もある。このように、電話番号以外のIDを用いることにより、機器の場所などを特定してコミュニケーションをするなど従来と異なったコミュニケーション方法が出現する可能性がある。
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(3)マルチメディア
- IP電話で用いているVoIP(Voice over Internet Protocol)技術を応用することにより、IPネットワーク上で音声以外にも映像やデータを同時に送ることができる。既に、多くのIP電話端末を用いたビデオ会議サービスが登場している。
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2.IP電話の特徴から考える可能性
このようなIP電話の特徴から、従来と異なる新たなIP電話の利用法の可能性を考えてみる。
(1)何にでも電話機能を付加
- 「電話機能がソフトウェア化される」ことにより、いわゆる「電話端末」以外の機器に電話機能を付加することが可能になる。例えば、テレビにIP電話機能を実装する例が登場し始めている。冷蔵庫や電子レンジなどの家電製品にまで、電話機能が必要かは様々な意見があるだろう。しかし、デジタルサイネージなどのディスプレイを見て、不明な点があればディスプレイをクリックして問い合わせをするなどの用途はあるだろう。
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(2)SNSとの連携
- SNS(ソーシャルネットワークサービス)の加入者が増えている。電話番号以外のIDと言う意味では、SNSのIDを使って電話をすることができれば、どこのコミュニティに所属する誰からの電話なのかが判別できる。また、音声でつぶやいた内容を「つぶやきサイト」に掲載するなどの使い方も出てくる可能性はあるだろう。
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(3)Voip2car
- 2010年3月にジュネーブで開催された欧州モーターショーにスイスのRinspeed社が開発した「voip2car」(写真)が展示されていた。「voip2car」は備え付けのカーナビゲーションシステムにあらかじめVoIP機能が搭載されており、自動車に電話番号が付与されている。キャリアはOrange社がサービスを提供している。Voip2carでは、電話の基本接続の他、ボイスメールやテキストベースのメール、つぶやきなど様々なコミュニケーション手段が搭載されている。また、それ以外のアプリケーションもインターネットを介して追加可能である。このような自動車を「走るiPod」と言う意味で「CarPod」などと呼ぶ人もいる。
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Rinspeed社のvoip2car
3.日本発コミュケーションツールとしての新たな可能性
日本は急速なブロードバンドネットワークの普及を背景に、IP電話加入者が既に2000万人を超えている。今後は、日本の文化や環境を背景にした日本ならではのコミュニケーションツールの登場が期待される。例えば、個人的には以下のようなサービスが出てくるのではないかと考えている。
(1)アバター(分身)活用
- 日本のアニメは世界で通用するコンテンツである。ビジネスの世界においても名刺に写真ではなく、自分の似顔絵を印刷している方もいる。(私もそうだが)ソフトフォンなどでは写真を掲示できる製品もある。私は、日本のアニメ文化を背景に自分の分身や企業のブランドを示すアニメを利用したコミュニケーションツールが進化するのではないかと考えている。着信時に一目で誰からの着信かわかるIP電話が日本発で広まらないであろうか。
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(2)翻訳電話
- 仕事上英語を使う場面が多いのだが、電話の英会話は未だに苦手である。電話機能がソフトウェア化できるIP電話では、翻訳アプリケーションと連携し、聞き取りづらい外国語をディスプレイ上に翻訳表示する「翻訳電話」が登場するのは、いつ頃だろうか?これからの時代、多くの国との交流が必要になる中、日本から世界に誇れる「翻訳電話」を発信したいものである。
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IP電話について5回にわたって、課題と取り組み、今後の活用について解説した。IP電話が今後の社会生活を豊かにする必要不可欠な存在になることを期待したい。
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