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Webコラム



 IPTPC からの情報発信

IPTPCは、2003年よりVoIP認定技術者資格制度の運営を行っており、累計資格者数は2011年7月の時点で18,000名を超えています。

これまで統一的な水準の技術者を養成するための研修や資格制度、また、ビジネスコミュニケーション東京等の展示会やIPTPC主催のIPTPCセミナ等を通じて、IP電話普及推進のための活動を行ってまいりました。今後は、IPTPCのホームページより、ホワイトペーパーやWebコラムなどを定期的に掲載することにより、今まで以上に情報発信を行ってまいります。


タイトル:
IPTPC連載コラム 「IP電話サービスの課題と将来展望」

第4回 IP電話の活用 〜新たなライフスタイル・ワークスタイルの実現〜

2010年9月17日
IP電話普及推進センタ(IPTPC)
OKI代表 千村 保文

  これまでにIP電話の課題と解決に向けた政府の取り組み、相互接続の状況をご紹介した。現在、ネットワーク業界では、次世代ネットワーク(NGN)やモバイルWiMAX、LTEなどのワイヤレスブロードバンドサービスなど、高速なIPネットワーク化が進展している。このようなIPネットワークの時代にはIP電話サービスは重要なコミュニケーションサービスの一つになるだろう。
  今回は、IP電話を活用した新たなライフスタイル・ワークスタイルについて考察する。



1.最近のIP電話システム・サービス

  「IP電話」と一言で言っても、多様なサービス、実現形態がある。本コラムでは、代表的な公衆IP電話サービス、企業向けIP電話システムについて、紹介する。


(1)公衆IP電話サービス

  公衆電話網としてのIP電話サービスは、既に各通信事業者が提供している。東京03等で始まる家庭の固定電話サービスの他、050番号で始まるIP電話サービスがある。

・主な端末の種類:HGW(ホームゲートウェイ)、FAX付電話、ビデオ端末、ソフトフォン
  多くのIP電話サービスでは、ホームゲートウェイというVoIPアダプタに既存の電話機やFAXを接続するタイプが主流である。また、VoIPアダプタの機能を内蔵したFAX付電話やテレビ電話もできるビデオ端末などもある。更には、PCにインストールして使うソフトフォンも登場している。
・最近のIP電話サービス:FMC(Fixed Mobile Convergence)、050番号利用サービス
  最近では企業向けのIP-PBXと連携し、携帯電話を企業の内線電話として使うFMCサービスもIP電話サービスを活用した応用サービスである。
  また、端末の種類(固定電話か、携帯電話か)や自宅の位置に依存しない050番号で始まるIP電話番号を使うサービスも提供されている。例えば、ペットが迷子になったときの対策として首輪や案内板に連絡先を記載する際に、家の電話番号を記載すると自宅の位置がわかってしまう。そこで、ペットの首輪等に050番号で始まるIP電話番号を記載することで、個人情報の漏洩を防ぐサービスがある。

(2)インターネット電話サービス
  インターネットを用いたIP電話サービスの多くは、PCやスマートフォンにインストールして用いるソフトフォン型が主流である。ソフトフォン型のインターネット電話は、異なる種類のソフトフォン同士の相互接続は出来ないが、公衆の電話網にはゲートウェイを介して接続できる。インターネット電話では、海外など長距離通話との通話が廉価に実現できるのが特徴である。
  また、最近ではインターネット電話ソフトをインストールした携帯電話型の無線IP電話機やテレビなども登場している。
 
(3)IP-PBX/ボタン電話システム
  企業内のコミュニケーションシステムとして、IP-PBXやIPボタン電話装置や公衆のIP電話を活用する例がある。IP-PBXなどでは、無線LANを用いた無線IP電話機やソフトフォンなど、多様な端末を使うことができる。
 
(4)IPコールセンタ・システム
  コールセンタ・システムもIP化されてきている。IPコールセンタ・システムでは、コールセンタのサーバとは離れた場所にオペレータが用いるPCや電話機の設置できる分散型コールセンタなどがある。
 
2.どのようなニーズにIP電話は適しているのか?

  それでは、IP電話はどういうニーズに適しているのであろうか?筆者の経験から、このようなユーザの要望に合致していると考えられる項目を挙げてみる。


(1)電話、特に長距離通話などを頻繁に活用する
  IP電話サービスの多くは、廉価である。全国一律で定額なサービスもある。インターネット電話サービスでは、通話料が無料というサービスもある。従い、海外との間で頻繁に通話をする必要がある方などには適しているであろう。
 
(2)PCやスマートフォンなどのコンピュータをよく利用する
  IPは、元々コンピュータ通信用プロトコルである。従い、PCやスマートフォンなどのコンピュータ・アプリケーションとの親和性が高い。よって、PCを用いながら、相手のプレゼンス(状態)を確認したり、テキストでチャットしながら、通話をしたりすることができる。コンピュータを頻繁に使う方には、メールと同様に重要なコミュニケーションツールとなる。
 
(3)端末に依存しない第2の電話番号が欲しい
  IP電話には050という端末に依存しない番号が使える。ソフトフォンでは、ソフトをインストールしたコンピュータが電話端末になるため、固定端末でも、携帯型の端末でも使える。よって、発信者の位置や端末の種類の情報を知られずに済むという方に適しているだろう。
 
3.新たなライフスタイル・ワークスタイル

  さて、ここまで紹介したIP電話の特徴から、IP電話に適したライフスタイルやワークスタイルを考えてみよう。


(1)ライフスタイル
  ①遠隔同居
  家族が海外などに単身赴任や留学している、あるいは地方に住む両親と息子夫婦間でコミュニケーションをとる場合、廉価なIP電話サービスが適している。IP電話では音声だけでなく、映像やデジカメの画像、テキスト情報も見ながら会話ができる。連絡時間を決めて一緒に食事をとったり、出かける前や帰宅後に定期連絡することで、離れていても同居している感覚でコミュニケーションができるだろう。
  ②コミュニティ・ライフ
  また、家族でなくとも、同じ趣味を持つコミュニティ間で情報交換をしたり、定期的な懇親の場を持つのにも向いている。
  ③フレキシブル・ロケーション・ライフ
  平日は都心部で仕事をし、週末は地方で趣味を楽しんだり、単身赴任で週末には自宅に戻る方は、番号に依らずコミュニケーションができるIP電話のスタイルが向いている。例えば、従来であれば自宅にいれば自宅の0AB-J番号、外出時や週末は090で始まる携帯番号、会社等ではIP-PBXの外線の050番号など、場所によって電話番号を使い分けていたが、予定が変って週末も出勤するようなケースでは電話を受け損なうケースもあった。IP電話を上手に使えば、このような問題が解決できる。

(2)ワークスタイル
  ①コンタクトセンタ
  IP電話の廉価である特徴を活かし、かつPCなどの操作が多い業務スタイルと言えば、コールセンタやヘルプデスクである。PCを操作しながら、様々な情報を処理することが可能であり、また、離れた場所にオペレータを配置することもできる。
  ②テレワーク(在宅勤務)
  これから需要が増えると想定されるのがテレワーク(在宅勤務)である。育児や介護のため通勤が困難な方や障害者の方などは、自宅でPCやIP電話機を利用することで仕事をすることが可能になる。少子高齢化の時代に時間を効率的に活用し、雇用を確保するには重要なワークスタイルである。
  ③モバイルワーク
  出張や外勤が多いビジネス人、営業職のように頻繁に移動し、かつ多様な端末を使いこなさなければならない業務にもIP電話は適している。事務所の固定電話、移動先の固定電話、プライベートでのスマートフォンを同じ電話番号で連携して使うなどのスタイルが定着するだろう。
  ④バーチャル企業
  最後に、これは筆者の個人的な考えだが、グローバルなアライアンスを結ぶ企業間でもIP電話は有効である。アライアンスを結ぶ企業間では、一定の期間にあたかも同じ会社の別の部署のように頻繁にコミュニケーションをとることが必要になる。しかし、情報のセキュリティは保たねばならない。そこで、PCごとにIP電話の内線番号を割り当てるなどが有効であろう。

 


  IP電話を活用したライフスタイルやワークスタイルについて、考察した。最終回(第5回)は、IP電話の更なる発展に向けた将来展望について、考察する。


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