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Webコラム



 IPTPC からの情報発信

IPTPCは、2003年よりVoIP認定技術者資格制度の運営を行っており、累計資格者数は2011年7月の時点で18,000名を超えています。

これまで統一的な水準の技術者を養成するための研修や資格制度、また、ビジネスコミュニケーション東京等の展示会やIPTPC主催のIPTPCセミナ等を通じて、IP電話普及推進のための活動を行ってまいりました。今後は、IPTPCのホームページより、ホワイトペーパーやWebコラムなどを定期的に掲載することにより、今まで以上に情報発信を行ってまいります。


タイトル:
IPTPC連載コラム 「IP電話サービスの課題と将来展望」

― IP電話の問題点と新たな利用スタイルを考える ―

2010年5月17日
IP電話普及推進センタ(IPTPC)
OKI代表 千村 保文

  IP(インターネット・プロトコル)を利用した電話サービス、即ち「IP電話サービス」が登場してから、かれこれ10年以上になる。サービス開始当初は、品質の悪い電話という印象が持たれがちであったが、業界をはじめIP電話の普及推進に携わる関係者の努力により、一般的なサービスとして根付いていると言えるだろう。しかしながら、今までの固定電話と同様の意識でIP電話を使用したところ接続できない番号があるなど、トラブルになるケースも未だあるようである。そこで、以下の構成にて、5回に亘りIP電話サービスに関する現状の課題を整理、これらを解決する政府や業界団体の動きを紹介し、IP電話を利活用した新たなライフスタイルや使用方法の可能性について考察する。

  第1回 IP電話のメリットと問題点
  第2回 IP電話に関する政府の動向
  第3回 相互接続への取り組み
  第4回 IP電話に適したライフスタイル
  第5回 IP電話の新しい使い方の可能性

  まず、第1回はIP電話のメリットと現状の問題点について整理してみよう。



第1回 IP電話のメリットと問題点

1.IP電話のメリット
  光ファイバやADSL、ケーブルテレビなどの高速、広帯域なIPネットワークを用いたIP電話サービスは、日本の全世帯の約1/3に当たる約2,000万世帯で利用されている(2010年2月末時点)。IP電話の最大のメリットは、何と言っても従来の固定電話に比べて廉価なサービスにある。050で始まるIP電話番号を用いたサービスでは同一事業者間では全国一律の定額制料金を採用している事業者もある。また、高速なIP通信を用いるために、映像などのマルチメディアサービスも用いることができる。利用する端末は、固定電話やPC、スマートフォンなど多様であり、相手が不在であるかを事前確認(プレゼンスと呼ぶ)することもできる。

IP電話のメリットのイメージ図

2.現状の問題点
   今後、IP電話が一般生活や企業活動の上で必要かくべからざる存在として更に普及していく為には、未だいくつかの問題があると考える

(ア)機能制限
   従来の電話は、グラハム・ベルが電話を発明以来、約100年ものあいだ技術開発、ネットワーク構築がなされてきた。しかし、IP電話は未だ10数年の歴史の新しい技術である。従い、現在のIP電話サービスにおいては、従来の電話サービスで実現していた機能の内、利用できない機能や利用上の制限がある機能がある。そのため、最近でも以下のような問題が発生している。

@事業者によって制限あり:例.緊急通報、フリーダイヤル、ナビダイヤル
A2010年1月12日消費者庁「全国消費者ホットライン」にて、IP電話接続できず。
   110番や119番などの緊急通報は、通話中に万が一切断されても通話を維持するなどの特殊な機能が備わっている。そのため、一部のIP電話サービスでは未だ緊急通報ダイヤルに接続できないケースがある。また、実際につながるコールセンターの場所を意識することなく、全国どこからでもかけられるフリーダイヤル「0120」やナビダイヤル「0570」も、IP電話ではサービス機能を提供できていないケースがある。このような利用制限は、IP電話だけではなく、PHSなどにおいても同様のケースはある。勿論、IP電話等のサービスを提供している事業者は、サービスに利用制限があることは契約時の条件として明示している。
   しかし、2010年1月12日から消費者庁が始めた「全国消費者ホットライン」では、フリーダイヤルを利用していたが、IP電話においては別の番号へダイヤルしなければならず、接続できないなどの問い合わせが発生した模様である。

(イ)音質問題
   IP電話と言うと、「音質が悪い」と言うのが第一印象の方がいるが、実際には従来のアナログ電話よりも高音質のサービスもある。しかし、従来の電話網では、電話交換機の設定のみにより音質は安定したものになっていたのに対し、IP電話ではIPネットワーク、IP電話システム、IP電話端末など、多くのシステム間の調整が必要であるため、構築の仕方によっては問題になるケースがある。また、このような調整を行なうためには、IPの知識と電話の知識の両方が必要であるにもかかわらず、現場では両方の知識を兼ね備えたエンジニアは増えてきたものの、未だ充分ではないのが現状である。

(ウ)ファクシミリ接続問題
   音質問題に加え、ファクシミリは更に繊細なサービスである。従来からも、ファクシミリ・メーカ間での相性や海外との接続などでは回線の品質によって、接続できないケースなどは存在した。しかし、IPネットワークを介したファクシミリサービスのためには、音声よりもさらに複雑な機能や設定が必要となっている。

(エ)複雑な課金体系
   IP電話サービスは、従来の電話サービスよりも廉価である。しかし、同一事業者のユーザ間では定額制であっても他事業者のユーザへの接続は従量制であるなど、課金体系は複雑である。そのため、050で始まるIP電話番号にダイヤルしたため、定額であると思って長電話をしたが後から電話料金を請求されクレームとなるケースもある。

(オ)相互接続性
   IP電話の接続などに用いる手順(プロトコルと呼ぶ)は、国内外の標準化機関が検討し、仕様を規定している。しかし、IP電話は未だ登場以来、日が浅いこともあり、異なるベンダの機器が何でも接続できるかと言うと、そうではないケースもあり、事業者やベンダが推奨する組合せで利用するのが最も安心いただけると言えるだろう。
IP電話の問題点のイメージ図

次回は、IP電話のこれらの課題に対して、総務省や関連団体が取り組んでいる法制度等の見直しの状況について、関連委員会に参加している立場から状況を紹介する。

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