IPTPC からの情報発信
IPTPCは、2003年よりVoIP認定技術者資格制度の運営を行っており、累計資格者数は2011年7月の時点で18,000名を超えています。
これまで統一的な水準の技術者を養成するための研修や資格制度、また、ビジネスコミュニケーション東京等の展示会やIPTPC主催のIPTPCセミナ等を通じて、IP電話普及推進のための活動を行ってまいりました。今後は、IPTPCのホームページより、ホワイトペーパーやWebコラムなどを定期的に掲載することにより、今まで以上に情報発信を行ってまいります。
タイトル:
「ビジュアルコミュニケーションがビジネスに与える真の効果」
2010年6月16日
IPTPCエバンジェリスト(日立製作所) 荒家正雄
ビジュアルコミュニケーションは単なるコスト削減としてだけでなく、収益向上を目的として活用される時代を迎えている。顧客の利用目的に合わせて柔軟に対応できるシステムが今後求められる。
出張費削減って本当?
テレビ会議やWEB会議システムは、これまで出張費などのコスト削減を目的に導入されるケースが多かった。筆者もそのように感じていたが、実際導入担当者の話を聞くと必ずしもそうでもないらしい。
まず、出張費削減について少し考えてみたい。
経営層が考えるシステム導入の最終目的はただ一つ。それはシステム導入によって「利益の拡大」なる効果を生むことである。利益を拡大するには、大きく2つの行動が求められる。
それは、『売上を増やす』か『費用を減らす』か。このどちらかだ。
一般的に「テレビ会議システムを導入する」ということは、後者の「費用を減らす」ためのツールとして使われる。「出張費削減!」がお決まりのキャッチフレーズであるが、すべての企業において効果があるというわけではない。出張費の削減効果は拠点の配置状況や利用頻度によって大きく変わってくるのだ。
ここで、2つの例をコストシミュレーションしてみよう。
■A社(某大手製造業)
- 営業会議を約2時間、東京本社で開催(月1回)
- 各支社(大阪、名古屋、福岡、仙台、札幌)から2名参加(計5支社)
- 出張旅費は1人往復平均4万円。(新幹線又は飛行機での移動)。
- 移動時間は往復約6時間
■B社(某地元金融業)
- 店長会議を約2時間、東京本社で開催(週1回)
- 各支店から1名参加(計100店舗)
- 出張旅費は1人往復平均2千円。(電車かバスでの移動)
- 移動時間は往復約2時間
テレビ会議端末が1台100万円(本社側の端末、センター装置は除く)、保守費は年間5%とすると、A社とB社の出張費削減効果は以下で算出される。(超概算ですが..)
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一時導入費用 |
保守費用(年額) |
出張費削減効果(年額) |
投資回収年月 |
A社 |
500万円
(100万円×5台) |
25万円
(導入費用の5%) |
480万円
(4万円×2人×5社×12回) |
約1年2ヶ月 |
B社 |
1億円
(100万円×100台) |
500万円
(導入費用の5%) |
1000万円
(2千円×1人×100店×50回) |
約20年 |
A社ならば1年半で回収できるので、導入メリットは大きい。一方、B社の場合は回収に20年もかかってしまう計算となるので、費用対効果を考えるとB社の導入は考えられないことになる。
■それでもテレビ会議を導入する理由
確かに、出張費だけの試算ではB社のテレビ会議システム導入はありえないように見える。
しかし、裏に潜む隠れた効果がある。
一つは、社員の移動時間を減らす(不稼動時間を減らす)ことができる点である。
出張移動中は通常自分の業務・仕事を遂行することができない。しかし、テレビ会議を利用できれば、今まで移動にかかっていた時間をそのまま業務に転用することができる。この効果が絶大だ。
読者の中で、忙しいときに1時間以上かかる出張が面倒に思ったことはないだろうか?
さらに、雨が降っていたらそれだけでいやになるし、移動するだけでも結構疲れてしまう。
出張先まで歩いたり電車に乗ることも立派な労働なのだが、自分の仕事には全く関与しない。
(仕事は残ったまま。出張から戻らないと業務が進まない)
しかし、テレビ会議を使えば、移動でかかっていた時間が一瞬でなくなる。ほんの1時間程度の打合せでも移動時間を入れて3時間くらいかかっていたのが、実質打合せの1時間で済んだとすれば、単純に考えるとその効果は3倍に相当する。単なる出張費削減だけだとあまり効果が見えないが、移動時間削減による業務効率という観点で考えるとテレビ会議システムの導入効果は歴然である。
さきほどのA社、B社の例で、移動時間で発生したロスタイムを、時給3,000円として換算すると、
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削減効果(年間) |
出張経費 |
移動時間(ロスタイム)にかかる人件費 |
A社 |
480万円 |
216万円 *1 |
B社 |
1,000万円 |
3,000万円 *2 |
*1) 時給3千円 × 往復6時間 × 10人 × 12回/年= 216万円/年
*2) 時給3千円 × 往復2時間 × 100人 × 50回/年=3,000万円/年
なんと、B社なら年間4千万円相当の削減効果が得られるのだ!!
B社の1億円の設備投資も3年以内に回収できる計算となる。これなら、テレビ会議システムを導入しても決しておかしくないはずだ。
■遠隔教育でも有効活用
もう一つは、会議以外の用途で有効活用できる点である。
近年では、ブロードバンドネットワークの低コスト化により広帯域のデータがストレスなく送受信でき、また最新の映像コーデック技術により高画質映像が複数拠点に対して同時送信できるようになった。
今までのテレビ会議システムでは単なる会議だけの利用しかできなかったが、現在では資料映像を送りながら講師が教育を行う「遠隔教育システム」や、社長の期首挨拶を映像・音声を通じて全店舗に同時配信する「リアルタイム講話システム」など、社員の意識高揚、能力育成に貢献するサブシステムとして利用することも可能になっている。
特に、先例のB社のような店舗数の多い場合に遠隔教育が実施できれば、移動時間の削減効果だけでなく、今までの集合教育にかかっていた一連の経費(研修場所、宿泊費など)も削減できるはずである。
■テレビ会議システムは+αの時代へ
今後、テレビ会議システムは「会議+α」の利用を求めるユーザーが増え、そのニーズに柔軟に対応できるシステム及びSEの存在がますます必要になると考えている。
会議に参加してほしい人や教育を受講してほしい人ほどその部署のキーマンであり、日々多忙な人である。そのキーマンが楽になる、ひと工夫を加えた提案力こそが今まさに現場で求められている。
お客様の業務効率向上、売上アップに貢献できる営業・SE育成のために、今後もコラムを通じてビジュアルコミュニケーションに関する情報発信を続けていく予定である。
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