IPTPC セミナ2019 のご報告
IPTPCでは、設立17周年となる昨年、12月13日に『IPTPCセミナ2019』を開催しました。年末のお忙しい中、多数のご来場をいただき、まことにありがとうございました。
次世代移動システム5G では、企業や自治体が産業や地域のニーズに応じた通信網を提供できる「ローカル5G」が規格化されており、国内でも制度化されました。
また、sXGPを用いて自営LTEを構築して運用することも始まっています。
通信ビジネスに関わる皆様にとって、新しい企業モバイルネットワークの登場は大きなビジネスチャンスです。本セミナーでは、ローカル5GやsXGP方式について有識者の方をお招きし、制度面、実務面からご講演を頂きました。
会場にIP電話にかかわる販売店、メーカ、通信工事業者、SIerを中心に120名近くが参加し、熱心に講演を聴講されました。アンケートでは「(総務省のローカル5GやsXGPへの)取り組みを大変、分かり易くご説明いただけてありがとうございます。」「(sXGPについて)分かりやすい説明でした。ビジネス体系が変わる転機であると理解し、ワクワクしました。」「具体的で今後のイメージが出来た。5Gの本音が聞けた。」などのご意見、ご感想を数多く頂きました。
テーマ: 『次世代企業モバイル環境について 〜ローカル5G・sXGP〜 』
セミナ会場の全景
基調講演
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総務省から、主に移動する無線局についてその技術基準の構築整備や電波の利用促進・免許等を所管する総合通信基盤局 電波部 移動通信課長 荻原 直彦様をお迎えし、「ローカル5GおよびsXGPの実現に向けての電波政策の取組と期待」と題する基調講演を頂きました。
講演では、5Gのこれまでの動きとこれからを概観できるようお話し頂きました。移動体通信の歴史から始め、第5世代移動通信システム(5G)の主要な機能、欧米中韓と日本の取り組み状況と医療・農業・建設・防災など分野毎のユースケースを説明され、総務省YouTubeチャネルから「5Gが実現する未来のイメージ」の映像を紹介頂きました。その後、総務省の5Gに関わるスケジュールと5G総合実証実験の実施状況、キャリアへの周波数割り当てについての説明がありました。 |
総務省 電波部移動通信課長 荻原 直彦様 |
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また、本講演のタイトルにあるローカル5Gの概要(地域や産業のニーズに応じて企業や自治体など様々な主体が免許を受け、建物内や敷地内で構築出来る5Gシステム)の紹介やsXGP方式に関わる検討(デジタルコードレス電話の無線局と公衆PHSの無線局との共用条件の検討)にも触れられました。 |
ローカル5Gの普及のため導入ガイドラインを策定予定で、地域課題解決型のローカル5G等の開発実証を始めるのでぜひご意見をお願いすると結ばれました。
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招待講演
昨年に引き続き、過去にPHSの規格化と普及を進め、現在は1.9GHz帯の「デジタルコードレス電話の無線局」にLTE方式を利用した新たな無線システム(sXGP方式)の規格化と導入を推進しているXGPフォーラムからExecutive Technical Advisor・BBバックボーン社の近 義起様をお迎えし、「sXGPの商用化と今後の展望について」と題する招待講演を頂きました。
講演では、5Gの特徴やLocal 5G/Private LTEとWiFiのそれぞれの違いをご紹介頂き、その中でsXGP方式の優位性について解説頂きました。利用シーンとして医療機関や工場などミッションクリティカルで高セキュリティが要求される業種を想定していることや、sXGPでは既存のスマートフォンを端末に利用できるためPHSの音声だけでなくデータ通信を利用したアプリ(例:病院での見守りなど)が可能であることが利点であり、また自営PHSには公衆PHSサービスの終了が迫りチップセットや部品供給の不安や同期の問題など課題があることを指摘されました。
総務省の情報通信審議会で、終了する公衆PHSの周波数をsXGPで利用可能にして周波数を広げる制度の審議が2019年度を目途に行われていることを解説いただきました。
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制度改正後に運用にあたり事業者(無線キャリア、公衆PHS事業者など)との調整スキームを検討しており、XGPフォーラムが窓口となる運用スキームの構築に向けてぜひXGPフォーラムへの参加を検討頂きたいと結ばれました。 |
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XGPフォーラム 近 義起様 |
パネルディスカッション
モデレータにIPTPC顧問の千村 保文、パネラーにXGPフォーラム/BBB 近 義起様と【IPTPC加盟社より】日立情報通信エンジニアリング 桝川 博史、NEC 藤本 幸一郎、OKI 西田 慎一郎に参加頂き「次世代企業モバイル環境の課題と期待」と題して議論いたしました。
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IPTPC顧問 千村保文、XGPフォーラム 近 義起様 |
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日立情報通信エンジニアリング 桝川博史、OKI 西田慎一郎、NEC 藤本幸一郎 |
本パネルでは、前半の最初にモデレータの千村より導入の説明があり、その後に招待講演者を除くパネラー3名にそれぞれ短いご講演を頂きました。
桝川『「5G」による変化』 ローカル5Gでは規制緩和が大きな変化。自営BWAやローカル5GによりIT基盤をリプレース。sXGP、自営BWA、Local-5G事業を推進する。
西田『ローカル5G活用に向けて』 5Gの特徴。AIエッジの活用に5Gやローカル5Gに注目し、スマート工場や建設機械遠隔制御など実証実験を推進する。
藤本『次世代企業モバイル環境の課題と期待』 5Gはワイヤレス通信に初めて導入される自由化。AI/IoTによる「モノ」「コト」との通信。ローカル5Gには課題がある(免許必要、費用高額、無線技術者、SIM発行など)。コミュニティ5Gを検討。
後半ではモデレータより質問を投げかけ、パネラーから回答を頂きました。
@(千村)ローカル5Gの普及のカギは? 免許申請は簡単にいくか?
(桝川)免許申請の簡素化をしないと普及は難しい。業者が経験を積みながらサポートする必要がある。
@-2 (千村)ローカル5Gの普及のカギは? 先ほどのお話のコミュニティ5Gとはどういうものか?
(藤本)今の制度のままでは上手くいかないので、コミュニティ5Gとしてコミュニティで電波シェアなど可能な方法を考えようとしている。
A(千村)sXGPはPHSの後継と言われるが、本当に後継となれるか?
(近様)制度改正は12月に伸びたが来年度には使えるようになる。5MHzでPoCをやり、来年度の本格導入を検討してほしい。
B(千村)音声系だけでない新しい利用方法はあるのか?
(近様)帯域が10MHz,20MHzになれば4Kや8Kなどいろいろできるようになる。
(西田)まだユースケースが限られる。エッジ側でAIを使いローカル5G/5Gを活用した新しい活用を考えている。
C(千村)携帯事業者とITベンダが連携する動きが活発だが、企業ネットワークにどのように関わってくるか?
(近様)キャリアは直接ローカル5Gの免許を取れないが、お客様がキャリアに頼むことは禁止されておらず、ここに入ってくるだろう。
(西田)今はスマホでSNSを使わない人はいない、PBX側もいかにSNS的なものを取り込んでいくかが重要な課題である。
(千村)ローカル5GやsXGPでキャリアのLTEや3GPPの技術が入り、4〜5年かかって普及する大変革期に入っていく。通信業界に大きな環境変化だがその上のユースケースはまだ確立されていない。ここが知恵の出し所で各社連携して行きたいと結びました。
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