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Webコラム



 IPTPC からの情報発信

IPTPCは、2003年よりVoIP認定技術者資格制度の運営を行っており、累計資格者数は2011年7月の時点で18,000名を超えています。

これまで統一的な水準の技術者を養成するための研修や資格制度、また、ビジネスコミュニケーション東京等の展示会やIPTPC主催のIPTPCセミナ等を通じて、IP電話普及推進のための活動を行ってまいりました。今後は、IPTPCのホームページより、ホワイトペーパーやWebコラムなどを定期的に掲載することにより、今まで以上に情報発信を行ってまいります。


実用段階に来たビジュアルコミュニケーション

2010年8月18日
IPTPC(Panasonic) 関 雅彦

前回はテレビ会議システムの変遷と、今ビジュアルコミュニケーションが注目されている理由を紹介した。今回は、ビジュアルコミュニケーションの進化の背景と、その実例や応用例を紹介する。

「TV会議」から「現在のTV会議」への進化

TV会議システムは他の様々なシステム同様に徐々に技術的な進化をとげてきた。
しかし、それは単なる「数字性能の向上」というひと言に収まらず、ある質的な変化を既にとげている様に思われる。

旧来のTV会議でも視覚要素はあるにはあったが、それは聴覚による会議の補助として「相手がそこに居る」という付加情報程度のものであった。

これが単に「見える」ということだけに留まらず、「身振り手振り、表情、目線といった感情が伝わる視覚要素」の伝達を実現し得た段階で、「単に相手が出席していることが確認できる」だけのTV会議から「全く新しいコミュニケーションツール」へと変化したと言えるのではないだろうか。

下の図は、前回コラムにあった相手に伝えるメッセージの影響度分布である。
(※これは、ある特定条件の調査結果であり一般論全てに当てはめることはできない。)

同じ「TV会議」という単語でありながら、直接会う事に比べて50%以下だったコミュニケーションレベルが、実際に「直接会う」100%の状況に近いレベルとなり、実は以前とは全く異なる次元のコミュニケーション手段へと変貌していると言えるのかもしれない。(メーカーは「TV会議」という名称ゆえに、逆に商機を逸しているのかもしれない。)

さて、現在のTV会議を「新たなコミュニケーションシステム」言うことができる様な状況が、また別な角度から見た実際の市場では起きつつある。

「TV会議」の名をはみ出し始めた新展開

TV会議という名前が固定観念として自らの市場を限定してしまっていたとしても、メーカーが新たなツールをユーザに提供し始めたとき、ユーザ/現場はその枠を越えて新たな可能性を打診してくる。
獲得した「性能」が単に「高性能なTV会議」であることを越えて「新たなる機能」となる。そんな現場発のソリューションが次々に実現されてくる段階を迎えた例を紹介する。

(1)高精細ビジュアルのミクロ的適用:現場現物を伴う打合せ

ビジュアルコミュニケーションをいろいろなユーザに展開して行く中で提供され始めたのが「高精細サブカメラ」である。
メインの打合せ用カメラ/映像と切り替えて、あるいはPinPでサブカメラを接続し、もう一つの映像を提供する。

左の絵はハードウェア開発メーカーが基盤をアップで写して実装を確認するサブカメラの事例である。
これ以外に実際にあった高精細サブカメラの導入例として、パチンコパーラーが開店前にクギがゴト師に細工されていないかを本部スタッフが確認する案件やアパレルメーカーがデザイン工房の試作品の評価を打合せする案件などがある

こういった現場現物のミクロな情報をビジュアルに伝えるという新たなソリューション要素が急浮上してきている。

(2)高精細ビジュアルによる空間共有:バーチャルプレイス

性能の上昇と、コストの低下、この2つが同時に進行した結果、必要な時に必要な人間のみが2地点を対向接続してきたTV会議システムに対し、異なる2地点を(不必要な時間帯も含めて)常時接続するソリューションへの展開が拡大しつつある。

左の絵は、ある会社が異なる拠点を横断して一つのチームを置き、その間を常に映像接続しておくことで、ちょっとした雑談を含めて、まるで一拠点の様に常に呼びかけができる接続画像を置いたオフィスである。

他にも、異なる拠点の教室を大画面でバーチャルに共有する学習塾や、イベントが異拠点で並行して進行し、それを双方で同時見られる実例などがある。

将来的には家庭でも離れて居住する家族が、喋る際にあえて接続操作するTV会議システムではなく、居間のある壁一面を画面とし、一続きの部屋での暮らしを感じ、何気なく話しかけることができる環境が、ひとつの目指すべき姿として描かれている。

こういった空間共有による、単純に会議として喋ることを越えた、いろいろな新たなコミュニケーションのあり方が提案され模索されており、会議の異拠点共有を超えて「同時に同場所に居る」こと自体をバーチャルに実現することによるソリューションが今後展開されていくことが予測されている。

ビジュアルコミュニケーションから、バーチャルパースンへ

では、現在の方向性から想定される今後目指されるビジュアルコミュニケーションの姿とはどの様なものだろうか。
家庭でもオフィスでも、実際は遠隔地にいる家族あるいは社員同士が3Dホログラムの人間として歩き回り、まるで隣に居るかの様に会話し、共同作業し、あるいはただ単に隣に座って息遣いを感じ取っている、という仕組みは理論としては既に可能となっている。
(※総務省調査研究会 報告書 http://daily2.sakura.ne.jp/sommato.html

コミュニケーション(=通信)の目指す所は電話の発明以来、空間のショートカットであった。人間の視聴覚の完全な空間ショートカットができたとき、ある意味では人は空間を制覇し住宅過密も通勤ラッシュも無い世の中がひょっとしたらできるのかもしれない。
我々はコミュニケーションの進化が世界の形を大きく変える一歩手前まで、実は今既に辿り着いているのかもしれない。


※バンクーバー五輪会長によるバーチャル握手

【IPTPC参加企業】 URL:http://certification.iptpc.com/link.htm


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