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Webコラム



 IPTPC からの情報発信

IPTPCは、2003年よりVoIP認定技術者資格制度の運営を行っており、累計資格者数は2011年7月の時点で18,000名を超えています。

これまで統一的な水準の技術者を養成するための研修や資格制度、また、ビジネスコミュニケーション東京等の展示会やIPTPC主催のIPTPCセミナ等を通じて、IP電話普及推進のための活動を行ってまいりました。今後は、IPTPCのホームページより、ホワイトペーパーやWebコラムなどを定期的に掲載することにより、今まで以上に情報発信を行ってまいります。


スマートフォンを企業で活用するためのポイント

2011年8月26日
IP電話普及推進センタ(IPTPC)
OKI代表 千村 保文

スマートフォンやタブレット端末が、携帯端末市場で注目されている。これらの端末は、3G携帯の機能を持ちつつ、WiFiなどのIP端末としても活用できる。そこで、スマートフォンやタブレット端末を企業で情報端末あるいはコミュニケーションツールとして活用したいという期待も増えている。しかし、スマートフォンなどの端末は登場して間もないため、企業利用を図るためには注意しなければいけないポイントがいくつかある。スマートフォンやタブレット端末の企業利用のポイントについて、3回にわたって解説する。


  第1回 スマートフォンを企業活用するための注意点
  第2回 スマートフォンの企業向けアプリケーションとセキュリティ
  第3回 スマートフォンでのVoIP利用のポイント


第3回 スマートフォンでのVoIP利用のポイント

前回は、スマートフォンを企業で活用するためのアプリケーション例と、そのためのセキュリティ確保のポイントを解説した。第3回(最終回)は、スマートフォンやタブレット端末を音声や映像などを使ったコミュニケーション端末として活用する場合の留意点について説明する。

スマートフォンやタブレット端末を企業で情報端末あるいはコミュニケーションツールとして活用したいという期待が増えている。しかし、スマートフォンなどの端末は登場して間もないため、企業利用を図るためには注意しなければいけないポイントがいくつかある。スマートフォンやタブレット端末の企業利用のポイントについて、第3回はスマートフォンにおいて、音声や映像を利用する場合のポイントについて解説する。

音声入出力の方法と音質調整

スマートフォンは、本来電話としての利用が想定されている。しかし、タブレット端末はデータ通信用途が主である。従い、タブレット端末を音声でのコミュニケーションに用いる場合は、ヘッドセットを用いるか、ハンズフリーで使うことになる。また、スマートフォンでも画面の映像を見ながら通話をする場合(スマートフォンの大画面を活かすにはこちらのスタイルを使う人が多いだろう)、ヘッドセットを使う。
スマートフォンやタブレット端末で、ヘッドセットを用いる場合やハンズフリーかによって、音声に関する設定が異なる。
例えば、ヘッドセットを用いる場合、ヘッドセットの音量はヘッドセットメーカやヘッドセットの機種によって異なる。従い、スマートフォンやタブレット端末に実装するソフトウェアの音量を耳で聞きながら調整する必要がある。
また、多くのスマートフォンやタブレット端末ではハンズフリー利用を想定していない。従い、ハンズフリーで使う場合、スピーカーの音をマイクで拾ってしまい、通信相手にエコー(自分の声が遅れて聞こえる)となって聞こえてしまう。VoIP対応のソフトフォンを実装して使う場合、ソフトフォンの設定でエコーキャンセラー機能があれば、これをONに設定するのも一つの対策である。しかし、エコーキャンセラーで除去できるエコーには制限があり、ネットワークの遅延の状況により完全にエコーが除去できる訳ではない。従い、スマートフォンやタブレット端末では、ハンズフリーでの利用はあまりお勧め出来ない。基本的には、音量調整をしてヘッドセットの利用が適している。

映像の種類と必要帯域

スマートフォンやタブレット端末を利用するネットワークには、携帯電話回線(3G)や無線LAN(WiFi)が主である。これらのネットワークは、表1に示すように、利用する方式により使える帯域が異なる。また、3Gでは事業者や地域によっても帯域に差異がある。映像を使う場合、双方向に同一の帯域が必要であり、ネットワークの上りの帯域が問題となることが多い。OKI調査では、携帯電話回線を使ったモバイルデータ通信サービスの複数地点での実測調査では、上りの帯域は最大帯域よりかなり低く3G回線で0.98Mbps〜1.01Mbps、WiMAXで0.9Mbps〜2.0Mbps、LTEで0.6Mbps〜6.1Mbpsなどばらつきがあった。

表1 ネットワーク区分別の最大帯域
区分 方式 最大帯域(※1)
携帯電話回線 3G 上り7Mbps、下り42Mbps
(イーアクセス、ソフトバンクモバイル例)
WiMAX 上り10Mbps、下り40Mbps
LTE 上り75Mbps、下り300Mbps
WiFi IEEE802.11b 11Mbps
IEEE802.11a/g 54Mbps
IEEE802.11n 150M/300Mbps

(※1)無線伝送方式上での最大帯域であり、事業者、地域、端末によりIP伝送の帯域は、この値よりも低い。

また、ビデオ会議では映像符号化方式や映像サイズ(解像度)によって、使用する帯域が異なる。地方や移動中の利用などでは高精細なH.264は利用しない、スマートフォンであればCIF、タブレットであればVGA程度の解像度を選ぶなどの工夫が必要である。

表2 映像符号化方式と解像度による必要帯域
映像符号化方式 使用帯域 使用帯域(CIF) 使用帯域(VGA)
MPEG-4 〜6Mbps 256kbps 768kbps
H.263 〜2Mbps 512kbps 1.5Mbps
H.264 〜240Mbps 256kbps 768kbps

音質の調整の仕方

スマートフォンやタブレット端末は、モバイル端末であるという特性上、屋外や駅構内などノイズが多い場所で利用することが多い。そのため、オフィス内でのPC利用に比べて、周囲ノイズが目立ちやすい。音質調整機能としてAGC(Auto Gain Control)やエコーキャンセラー機能が搭載されている場合は、場所や状況に応じて、これらの機能を使うことが有効である。しかし、これらの機能は全てのケースで有効である訳ではないので、利用するケースによって使い分けることが必要になる。

スマートフォンやタブレット端末における音声や映像でのコミュニケーション機能は、便利な機能ではあるが、ネットワークの込み具合や周囲のノイズなどによって性能に差が出やすい。音質や画質の設定に係わる機能を上手に使いこなすことが上手にスマートフォンやタブレット端末と付き合うコツである。

本コラムには、筆者の個人的な意見が含まれています。


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