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Webコラム



 IPTPC からの情報発信

IPTPCは、2003年よりVoIP認定技術者資格制度の運営を行っており、累計資格者数は2011年7月の時点で18,000名を超えています。

これまで統一的な水準の技術者を養成するための研修や資格制度、また、ビジネスコミュニケーション東京等の展示会やIPTPC主催のIPTPCセミナ等を通じて、IP電話普及推進のための活動を行ってまいりました。今後は、IPTPCのホームページより、ホワイトペーパーやWebコラムなどを定期的に掲載することにより、今まで以上に情報発信を行ってまいります。


スマートフォンを企業で活用するためのポイント

2011年6月8日
IP電話普及推進センタ(IPTPC)
OKI代表 千村 保文

スマートフォンやタブレット端末が、携帯端末市場で注目されている。これらの端末は、3G携帯の機能を持ちつつ、WiFiなどのIP端末としても活用できる。そこで、スマートフォンやタブレット端末を企業で情報端末あるいはコミュニケーションツールとして活用したいという期待も増えている。しかし、スマートフォンなどの端末は登場して間もないため、企業利用を図るためには注意しなければいけないポイントがいくつかある。スマートフォンやタブレット端末の企業利用のポイントについて、3回にわたって解説する。


  第1回 スマートフォンを企業活用するための注意点
  第2回 スマートフォンの企業向けアプリケーションとセキュリティ
  第3回 スマートフォンでのVoIP利用のポイント


第2回 スマートフォンの企業向けアプリケーションとセキュリティ

前回は、スマートフォンを企業で活用するための注意点について述べた。今回は、企業においてスマートフォンを有効に活用するためのアプリケーション例と、そのためのセキュリティ確保のポイントを示す。

前回、スマートフォンやタブレットなどの端末を企業で有効に使うには、目的を明確にする必要があると述べた。代表的な例としては、(1)モバイルPCの代わり、(2)廉価な専用端末が挙げられる。その具体的なアプリケーション事例を紹介する。(図1参照)


図1

(1)モバイルPCの代わり

モバイルPCの代わりとは、ノートPCやネットPCでも実現できるが、携帯のし易さ、タッチ画面による操作のし易さ、電源投入後の立ち上げの早さというスマートフォンの特徴を活かし、屋外や屋内で3Gあるいは無線LANを用いて、動きながらの作業ができる使い方である。

1.作業現場作業員用端末
対象企業例:工場、保守員、工事現場、マンション修繕管理等
広い工場における作業員やユーザ先企業で作業する保守員、あるいは屋外で作業を行う電気工事者やマンションの修繕管理者は、従来作業を終了後に事務所に戻ってからPCで日報を入力するなどを行っていた。あるいは、モバイルPCを持参し、移動する自動車内等で入力作業をすることが多かった。しかし、携帯性の良いスマートフォンならば、持ち歩きながら入力作業をしたり、現地の写真を撮影し、その場で本部に3Gを使って送信するなどが可能である。また、GPS機能を用いて、作業員の位置を把握できるため、近隣にいる作業員に応援を依頼するなどのアプリケーションも実現されている。
2.コンシェルジュ端末(お客様案内等)
対象企業例:金融機関、自動車ディーラー、製薬会社・MR、保険外交員、病院(電子カルテ)等
1.と2.のアプリケーションを更に進化させた例として、お客様案内のためのコンシェルジュ端末が考えられる。これは、金融機関や自動車ディーラー、製薬会社のMR、保険外交員等がお客様に商品カタログ等を表示しながら、商談を進める場合などに有効である。また、病院において医師が入院中患者の病室においてカルテ等を示しながら、病状を説明するなども可能であろう。これらのケースでは、画面の大きいタブレット型の端末が有効である。
3.会議端末
対象企業例:学校、塾(遠隔授業)、一般企業/小売店(研修)等
今後、スマートフォンの活用例として増加すると考えられるのが、学校や塾での授業や企業での会議端末による研修である。生徒ごとに端末を与える場合、PCよりもスマートフォンの方が機器は廉価である。学校や塾においては授業だけに限らず、GPS機能を使うことで、生徒の行き帰りなどの安否確認などにも利用することができる。
また、企業では、携帯端末サイズのスマートフォンであってもどこでも研修を受講することができる。これは、スマートフォンの性能向上とともに、ビデオ会議などのアプリケーションが普及してきたことが背景にある。

(2)廉価な専用端末

廉価な専用端末とは、従来はバーコードスキャナなどの付いた専用端末で実現していた業務を汎用のスマートフォンをベースに拡張の入出力装置とアプリケーションで実現した端末である。(1)のモバイルPCとの違いは、主に屋内、企業構内での利用が用いるケースが多い。(現時点のスマートフォンでは、防水や防爆機能が十分な端末が少ないため)

1.受付端末/インターフォン
対象企業例:一般企業、鉄道会社等
従来、一般的な企業における無人の受付には高価な専用端末か、汎用のPCが設置されていた。高価な専用端末の場合、すべての受付に設置することは難しかった。一方、汎用のPCによる受付システムでは、利用者が勝ってに操作することが可能であり、セキュリティの面で不安があった。その点、スマートフォン、特にタブレット型端末では、専用端末に比べて廉価であり、かつ必要な業務のみに特化したアプリケーションのみを実装することが可能であり、受付端末に向いている。また、IP電話によるソフトフォンを実装することにより、インターフォンとしての利用も可能であり、鉄道会社などにおいて、導入事例がある。
2.注文受付・予約端末
対象企業例:レストラン、小売業、金融機関、病院、図書館等
最近、スマートフォン、特にタブレット端末の利用例として増えているのが、レストラン等での注文受付端末である。これは、利用者が席にいながら、注文をタブレット端末で入力できるため、注文ミスが少なくなり、かつ従業員の効率化にもつながる。最近では金融機関や病院でも、試行する例が出ている。また、図書館など公共機関において、本の予約などの端末に利用する例が登場している。
3.情報提供端末
対象企業例:金融機関、病院、図書館、美術館、ツアーコンダクター、自動車ディーラー等
スマートフォンの利用例として最もポピュラーなアプリケーションが情報提供端末である。金融機関や、病院の他、ツアーコンダクターや自動車ディーラーがユーザーの要望に対して、的確な情報を文字だけでなく、画像等を交えて提供することができる。さらに、病院やツアーコンダクターなどにおいては、日常の情報連絡や災害時の緊急告知などをセンターから各担当者のスマートフォンへ、迅速に伝えたり、場合によっては現地の情報を、センターにて集約したりすることができる。
また、美術館において、鑑賞者に無線LAN付きのスマートフォンをレンタルし、美術品のIDや場所を認識することで、音声や文字で説明を聞きながら鑑賞することができるサービスである。
4.現場作業専用端末(バーコードスキャナ付きスマートフォン)
対象企業例:運送業、倉庫(在庫管理)等
企業において、スマートフォンの利用として期待されるのが、専用のハンディーターミナルの置き換えである。しかしながら、現時点ではすべてのスマートフォンにおいてバーコードスキャナなどの機能が使えるわけではない。端末を選ぶことにより、運送業や倉庫での在庫管理などが容易になるであろう。また、運送業などでは、車載カメラと連携することで、万一の事故時などにも、状況を瞬時に把握したりすることも可能となる。

セキュリティ確保上のポイント

企業において、スマートフォンやタブレット端末を使う場合、ネットワーク接続は3Gや無線LANなどを使うのが一般的である。その際には、セキュリティの確保が重要になる。

  • 無線LAN

    ほとんどのスマートフォンやタブレット端末では、IEEE802.11に準拠した無線LAN機能が搭載されている。ただし、企業で無線LANを用いる場合には、ネットワーク管理者の設定したポリシーに基づく認証方法や暗号化機能を用いる必要がある。一部のスマートフォンでは、高度な設定をユーザに公開していないケースがある。従い、企業の無線LAN配下でスマートフォンを用いる場合、あらかじめ試行評価してから用いる必要がある。特に、移動しながら利用する場合には、ハンドオーバーの時間などを計測して、アプリケーションが正しく機能するか評価しておくことが賢明である。

  • 3GにおけるVPN

    屋外でスマートフォンを用いる場合は、携帯キャリアの3G機能を用いて会社と接続する。この場合、会社の指定するVPN機能をスマートフォンに実装する必要がある。しかし、VPNソフトによっては特定のスマートフォンには実装できないケースもある。よって、VPN機能も評価しておく必要がある。

  • VPNマネージャ

    VPN機能は利用者が自分の操作で接続するが、アプリケーションを操作中に電波環境により切断された場合、手動で再設定するのは非効率である。よって、VPNを自動的に再設定するなどのマネージャ機能を持ったVPNソフトの利用が望ましい。

  • オフライン機能

    また、Webアプリケーションを用いる場合、VPNが切断されてしまうと作業が中断されてしまう。その場合は、スマートフォン単独で作業が継続できるよう、サーバーの一部機能を代替するオフライン機能を有するソフトをソフトフォンに実装しておくと良い。

総括

  • プラットフォームが大事

    企業において、スマートフォンやタブレット端末を用いる場合、前述のセキュリティ機能などの実装が必要である。これらの機能は個別に実装することも可能だが出来れば、セットで必要なスマートフォン用の機能を備えた業務アプリケーションプラットフォームを準備することが望ましい。
    特に、スマートフォンやタブレット端末のハードウェアは、更新が速く、また永久に製造されるものではない。そのため、ハードウェアが変更になっても操作性に変更がないように、マルチプラットフォームのハードウェアに対応した業務プラットフォームを選べれば最善である。

次回は、スマートフォンにおいて、音声や映像を利用する場合のポイントについて解説する。

本コラムには、筆者の個人的な意見が含まれています。


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