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Webコラム



 IPTPC からの情報発信

IPTPCは、2003年よりVoIP認定技術者資格制度の運営を行っており、累計資格者数は2011年7月の時点で18,000名を超えています。

これまで統一的な水準の技術者を養成するための研修や資格制度、また、ビジネスコミュニケーション東京等の展示会やIPTPC主催のIPTPCセミナ等を通じて、IP電話普及推進のための活動を行ってまいりました。今後は、IPTPCのホームページより、ホワイトペーパーやWebコラムなどを定期的に掲載することにより、今まで以上に情報発信を行ってまいります。


タイトル:
IPTPC連載コラム 「IP電話サービスの課題と将来展望」

第2回 IP電話に関する政府の動向

2010年6月16日
IP電話普及推進センタ(IPTPC)
OKI代表 千村 保文

  前回は、IP電話のメリットと問題点について、現状の課題を整理した。今回は、IP電話の課題について、私が参加している総務省のIPネットワーク設備委員会の取り組みを中心に、その目的や効果について解説する。



1.IP電話認定の動き

  前回、現在のIP電話サービスではサービス提供する事業者によって幾つか機能制限があることを説明した。機能制限の要因は、事業者ごとに異なる。しかし、緊急通報など公共性の高いサービスの機能については、IP電話端末が実装すべき技術基準を定めることが必要である。総務省の情報通信審議会IPネットワーク設備委員会において、平成21年7月に、いわゆる0AB〜J番号を用いるIP電話端末の技術的条件等について報告がなされた。この報告を基に、総務省では平成22年3月末、IP電話端末の技術基準を定めるとともに同端末を技術基準適合認定制度上で新たに「端末種別E」として規定するため、「端末設備等規則」の改正案等を公表した。
  この「端末種別E(IP電話端末)」について、少し解説しよう。(図1)

 
図1 端末設備等に関する規定の改正概要

端末設備等規則等の改正 「端末種別E(IP電話端末)」認定概要
  公衆網に端末を接続するときには、「端末設備等規則」に記載されている技術基準に則り端末認定を受けなければならない。しかし、現在の端末設備等規則にはIP電話端末という端末の区分は存在していなかった。それでは、既にサービスが提供されているIP電話端末は何の規定に従って接続されているのだろうか?
  それは、データ通信に関わる端末として「デジタルデータ伝送用設備に接続される端末」の規定(端末種別D)に準拠している。
  しかし、IP電話に特有の条件については、このやり方では実装の要否や方法がバラバラになってしまう。そこで、今回「IP電話端末」という規定を設けようということになった。そのIP電話端末特有の規定について、主なポイントを説明しよう。

(1)基本的な条件
・識別情報登録
  IP電話の多くは、SIP(Session Initiation Protocol)という手順を使っている。このSIPでは、通常、端末をネットワークにつなげると、ネットワークの中のサーバに自分の登録された位置とアドレス等の識別情報を登録する。この機能により、端末を移動しても、同じサービスが受けられる。しかし、地域での大規模停電などが発生すると、停電が回復した際に各家の端末が一斉に識別情報をサーバに登録しようとする。そのためにサーバが混雑して処理が追いつかず、登録できないことになる。メールなども同様の手順を採用しているが、メールならば少し遅れてもメッセージが届けば良いが、電話端末は線につながっているのに電話がかからないようでは困る。
  そこで、一斉に識別情報登録する際には、ネットワーク上のサーバが混雑しないよう、端末ごとに登録タイミングをずらして登録するなどの技術基準が必要となる。
・ふくそう通知機能
  従来の電話機では、ネットワークが混みあって電話がかからない場合は、「プー、プー」というような音や「ただ今混みあっておりますので、しばらくしてからお掛け直しください」というアナウンスを流すなど音で時間をおいてから再発信するようユーザに知らせていた。しかし、IP電話の端末は、従来の電話機のような形をしたものから、PCにソフトとして実装するものや、映像と連携した高度なものまで多様である。そこで、いずれの場合でもユーザにネットワークが混みあっていることを確実に伝えるための条件が必要となる。
(2)緊急通報に関する条件
  日本の緊急通報は、警察や消防等に最優先で確実につながり、万が一警察などと通話中に通話が切れても通話を保持したり、呼び返したりする高度な機能がネットワーク側に搭載されている。
  しかし、海外で販売されている携帯電話端末を日本で使うような場合、国によって緊急通報の番号が異なる(アメリカでは911番で警察、消防の機能に接続される)ため、端末によっては日本の110番、119番などの緊急通報がつながらない事例もあった。
  そこで、今回の改正ではIP電話やそれ以外の携帯電話等も含め、緊急通報へ発信するための端末の機能を規定することとなった。(図2参照)
 
 
図2 端末設備等規則の改正詳細

2.今後の課題

  前述のE 認定された「IP電話端末」を用いることにより、IP電話を利用する際の課題も解決されるだろう。しかし、まだ全ての課題が解決する訳ではない。残された課題について、概要と解決策を紹介しよう。

(1)接続できない番号や機能
  前回紹介した0120番で始まるフリーダイヤルや、0570番で始まるナビダイヤルなどは、IP電話事業者によっては接続できない。このような番号に制約があるケースは、従来もPHSやPBXの内線電話などでも存在した。また、ホテルや企業の内線電話からは日頃家庭からかけている電話のかけ方と異なっている。そのため、ホテルや企業の電話には、発信方法を端末に表示したり、かからない電話番号を示すなどの工夫がなされてきた。IP電話も市民権を得るためには、このような地道な努力が必要と考える。
 
(2)ソフトフォン
  従来の「電話機」は、発売前には技術基準に則っていることの認定を受ける必要がある。この端末認定の際には、大きさや形状、ネットワークへ与える電気的な条件のデータ等を提示する必要がある。しかし、PC等にIP電話用のソフトウェアを実装するソフトフォンでは、ソフトウェアを実装するPCの大きさや形状、電気的な条件等がPCによって異なる。そこで、ソフトフォンを実装するPCの条件を明示することなどが必要になる。ソフトフォンをどのように認定するかについては、先に紹介した総務省のIPネットワーク設備委員会において報告がなされている。現在でもソフトフォンは、PBXの内線などで利用されているが、今後、緊急通報なども出来る普通の電話として利用される日も来るだろう。
   そうなると、電話機の形をしていないが、画面にタッチするだけで通話ができるIP電話が登場するかもしれない。
 

次回は、IP電話の相互接続性向上に向けての国内外の取り組みを紹介する。


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